- 植栽木にからまるつる植物を根元から切断し、つるを幹から取り除く作業。
8.1. つる切りの目的
- 植栽木に対する、つる植物の被害を抑制する。
- [理由]つるの被害は林木に致命的な被害を及ぼしたり、木材としての経済的価値を著しく損ねたりするため、林業経営に大きな打撃を与える。
8.2. つるによる植栽木の被害
- 幹に巻き付いたつるにより、幹の肥大成長が異常になる。
- 幹に巻き付いたつるにより、幹が変形する。
- 幹につるが巻き付いた部分が弱点になり、冠雪や強風により折損被害を受ける。
- 樹冠を覆ったつるにより、植栽木の光合成が阻害され、成長が減衰する。
- 樹冠を覆ったつるの重みで植栽木の梢端が曲がり、幹の曲がりにつながる。
- 植栽木に寄りかかったつるの重みで幹が傾き、幹の曲がりにつながる。
- 付着型以外のつる植物は、植栽木の樹冠を伝いながら他の植栽木に移動するため、放置すると集団的な被害になる。
8.3. つるの特徴と種類
- つる植物は、自立できず、他者に依存して高い位置に葉を持ち上げる。
- 草本と木本がある。
- 草本性つる植物は、植栽木が小さい時期に植栽木に被害を及ぼす。
- 木本性つる植物は、植栽木が小さい時期から成林した後まで、ずっと植栽木に被害を及ぼす。ただし、植栽木が深刻な被害を受けるのは、植栽木が若いとき。
- つる植物の伸長成長速度は、一般にきわめて速い。
- 他者への依存の仕方で、寄りかかり型とよじ登り型に大別できる。ただし、両者を厳密に区分できないこともある。
- 寄りかかる仕組みとして、鉤かけがある。
- 鉤かけ型には、カギカズラ、サルトリイバラ、ジャケツイバラ、ノイバラなどがある。一般に言うつる植物以外の種が含まれるが、造林の立場からはそれらもつる植物と同等に扱うとよい。
- よじ登る仕組みとして、巻きひげ、巻き付き、付着がある。
- 巻きひげ型には、ヤマブドウ、マメ科のつる類、センニンソウ属(Clematis)などがある。
- 巻き付き型には、フジ、マタタビ、サルナシ、ツルウメモドキ、アケビ、クズなどがある。
- 付着型には、キズタ、ツタ、テイカカズラ、ツタウルシ、イワガラミ、ツルアジサイなどがある。
- 寄りかかる仕組みとして、鉤かけがある。
8.4. つる切り作業の時期・季節
- つる切りは、つるに被害の危険がなくなるまで続ける。
- 下刈り期間中は、下刈りと同時につる切りを行う。
- 下刈り終了後も、つる切りは継続する(ここからが本格的なつる切り)。
- [理由]つる植物は成長が速いので、あっという間に植栽木によじ登る。それ以外の雑草木とは性質が違うということを心得ること。
- [理由]下刈り終了後に放置した場合、放置年数が多いほど、またつる植物の密度が高いほど、つるの被害が多くなる。
- [理由]つるが少しでも幹に食い込んだら、その跡はずっと残る。
- つるの多い造林地では、下刈りが修了してから数年間は、毎年、つる切りを行う。
- つる切りを兼ねた、やまの見回りをするとよい。
- つるの巻き付きを発見したら、その都度、つる切りを行う。そのためには、入山するときは必ずナタを携行する。
- つる切りに適した季節は、7月ころである。
- [理由]根茎の貯蔵養分が少なくなり、再生力が弱くなる。
8.5. つる切り作業の進め方
- つるを根元で切断し、植栽木からていねいに外す。
- [理由]切断したところから上部は枯れるが、そのままつるが残っていると、小端部では健全な伸長成長が妨げられ、幹では巻き締めが継続する。
- つるを外す際に、無理に引きずり下ろすと、そのことで梢端を傷つけてしまう。力任せに引きずり下ろそうとしないこと。
- 下刈り時には、刈り払いが終わった後につる切りの仕上げをする。
- 刈り払い機では植栽木の根元近くに生えているつるを切れないので、鎌で切る必要がある。
- 刈り払っただけではつるが植栽木から離れないので、つるを外す必要がある。
- 幹に巻き付いたつるを外すためにナタで切断するとき、幹を傷つけないよう注意する。
- 植栽木の根元近くに生えているつるは、つるを切らずに、つるの茎をグルグル巻いて植栽木から離して置くのもよい。切らないと外れないときは、つるを高い位置で(つるを長めに残して)切断して、グルグル巻く。
- [理由]つるを根元で切断すると、萌芽したつるが再びその植栽木によじ登りやすい。
8.6. つるに関する注意
- つる植物は、林冠が閉鎖したときに林冠に達していなければ、その後は衰退する。
- 閉鎖林冠下の林床に、ほそぼそと生活するつる植物(フジなど)がある。これらは、間伐などで林内が明るくなると活性化し、また皆伐などの大きな撹乱後には猛威を振るうようになる。