1. 苗木
  2. 苗木の形状(裸苗・コンテナ苗・ポット苗・チューブ苗)
  3. 良い苗木の条件
  4. 苗木の取り扱い方

3.1. 苗木

  • 種子から育てた苗木を実生苗、さし木によって発根させて育てた苗をさし木苗という。
  • 実生苗は、種子生産の段階で交配の影響を受けるので、母樹の遺伝子を100%は受け継がない。
    • 実生苗を用いた場合、成長の個体間のバラツキがさし木苗より大きい。
    • 実生苗を用いた場合、各種の被害に対する抵抗力に個体差が生じる。
    • 実生苗を用いる方が、共倒れ型の被害が発生しにくい。
  • さし木苗は、母樹のクローンであるため、母樹の遺伝子をそのまま引き継ぐ。
    • 優れた形質を発現しやすいので、目的に合った材を生産しやすい。
    • さし木苗を用いた場合、実生苗より、成長や抵抗性に個体差が小さい。
    • さし木苗を用いる方が、共倒れ型の被害が発生しやすい。

3.2. 苗木の形状(裸苗・コンテナ苗・ポット苗・チューブ苗)

  • 苗木にはいくつかの形状がある。それにより、取り扱いの難易や植栽作業の工程などに違いが生じる。
  • 裸苗(普通苗):苗畑(露地)で育てられた苗
    • ふつう、他の形状の苗木より価格が安い。
    • 根が裸出しているので、取り扱いに神経を使う。
    • 根が裸出しているので、他の形状の苗木に比べると植栽時期が限定される。
    • 根を広げて植えるので、植栽の効率が悪い。
    • 根鉢がないので、造林地で大量の苗を持ち運ぶのに適している。
  • コンテナ苗(プラグ苗):穴が開いたトレイまたは筒状の容器で育てられた苗
    • 空中根切りにより、根のルーティングがない。
    • 空中根切り:根は空気に触れるとそこで成長が止まる。この性質を利用して、容器の底を根が外に伸びやすい形状にし、根を容器の外に出させて、そこで根の伸長を止めるという栽培法。
    • 培地付きの苗木であるため、取り扱いが容易。
    • 植栽時期を広くとれる。
    • 裸苗に比べると、造林地で持ち運びにくい。
  • チューブ苗:ナイロンまたは不織布のチューブで育てられた苗
    • チューブのまま持ち運ぶので、コンテナ苗よりも取り扱いや持ち運びが容易。
    • 生分解性のチューブであれば、そのまま植えられる。
  • ポット苗:主にビニール製のポットで作られた苗。
    • 広葉樹の苗木にこの形状が多く、針葉樹の造林に用いられることはほとんどない。
    • ポット内で根がルーティングを起こしているものが多い。
    • 培地付きの苗木であるため、取り扱いが容易。
    • 根鉢の大きさがコンテナ苗・チューブ苗より大きいので、さらに重く、造林地で持ち運びにくい。
    • 一般に価格が高い。

3.3. 良い苗木の条件

  • 苗木は大切な造林材料である、その良否が造林の成績に大きく関わる。したがって、良い苗木を剪定することは重要である。
  • 以下のような苗木が良い苗木である。
    • 幹がまっすぐである。
    • 頂芽が完全である。
    • 枝葉が四方に均等に分岐している(ヒノキを除く)。
    • 樹種・季節に固有の色・光沢を持っている。
    • 裸苗の場合、主根が短く、側根、細根が多い。
    • 裸苗の場合、鳥足状の根でない。
    • コンテナ苗・チューブ苗・ポット苗の場合、根鉢に根がよく回っている。
    • コンテナ苗・ポット苗・チューブから外して植栽するチューブ苗の場合、栽培容器から苗木を外しても根鉢が崩れない。
    • T/R率(地上部重量/地下部重量)が低い。
    • とくに裸苗・ポット苗の場合、比較苗高(苗高/根元直径)が小さい。

3.4. 苗木の取り扱い方

  • 苗木の取り扱い方は植栽後の活着の良否に影響するので、苗木はていねいに取り扱うこと。
  • 裸苗の場合、培地付きの苗木に比べると根が乾燥しやすい。とくに注意すること。
  • 苗木の梢端を傷つけないこと。
  • 苗木は、日陰で管理すること。
  • 培地付きの苗木の場合、植栽作業に向けて培地の水分を上手にコントロールすること。
    • 水分が多いと重くなる。
    • 水分が多いと、容器から根鉢を外したときに根鉢が崩れやすくなる。