• 植栽する前に、植栽予定地の雑草木の刈り払いや、伐採木の末木・枝条や刈り払った雑草木の片付けをする作業。
    • 末木:伐採した林木の梢端部。
    • 枝条:樹木の支幹と枝の総称。この場合は、伐採後の枝払いで切り落とした枝。
  • 一般的には、植栽の直前に行う。
  1. 地拵えの目的
  2. 地拵えと後作業の関係
  3. 地拵えの方法(雑草木の刈り払い)
  4. 地拵えの方法(枝条や刈り取った雑草木の処理)
  5. 集材方法と地拵えの容易さ
  6. 棚積み地拵え作業の進め方
  7. 地拵え作業のコツ・注意点
  8. 機械(重機)を使用する地拵え
  9. 地拵え作業における安全管理

4.1. 地拵えの目的

  • 植栽作業を容易にする。
    • [理由]林地に枝条が散乱していると、植え穴を掘るとき、枝条を片付けてから始めなければならないので工程が落ちる。
    • [理由]林地に枝条が散乱していると、植栽作業での移動のじゃまになる。
  • 植栽作業を安全に行えるようにする。
    • [理由]林地に枝条が散乱していると、歩行の際につまずいて転んだり、それが原因で転落したりする危険がある。
  • 植栽木が生育しやすい環境をつくる。
    • [理由]雑草木が存在すると、植栽された苗木が被圧される。
    • [理由]大きな末木・枝条などが残っていれば、植栽された苗木が被陰を受けやすい。

4.2. 地拵えと後作業の関係

  • 地拵えがきちんとされていると、後作業である下刈りが楽になる。
    • [理由]地拵えでの雑草木の刈り払いをしっかりすることで、植生の回復を少し遅らせることができる。
    • [理由]地拵えで残材が整然と整理されていれば、下刈り作業の工程がはかどり、安全性も増す。

4.3. 地拵えの方法(雑草木の刈り払い)

  • 雑草木の刈り払いの仕方やタイミングにいくつかの種類があるので、長所・短所をよく理解して方法を決める。
  • 地拵え作業の工程だけでなく、その後の下刈り作業の工程を含めて、刈り払いの方法を決めることが大切。
    • 全刈り地拵え:植栽予定地の全面にわたって、雑草木を刈り払う。
    • 最も一般的な方法。
    • 刈り払った雑草木は、末木・枝条と一緒に林地の何ヵ所かに集積する。通常、等高線沿いに筋状に置く。→ 横筋棚積み地拵え
    • 作業量が多いため、人工数が多くなる。
    • 筋刈り地拵え:植栽する列だけを刈り払い、残りはそのまま放置する。
    • 以下の場合に採用することがある。
      • 植栽密度が低いとき。
        • [理由]植栽密度が高いと、全刈り地拵えと変わらなくなる。
      • 寒風害を防ぎたいとき。
      • 表土の流亡を防ぎたいとき。
      • 労力や経費を削減したいとき。
  • 刈り払った雑草木は、残った列に沿わせて置く。
    • 残存筋の植物が繁茂すると、植栽木を被圧することがある。
    • ノネズミやノウサギによる食害が発生しやすい。
    • 坪刈り地拵え:苗木を植え付ける場所の周囲だけを刈り払う。
    • 採用する理由、利点、欠点は、筋刈り地拵えに準ずる。
    • 筋刈り地拵えより刈り払う面積が小さくなるので、筋刈り地拵えに比べて作業の諸緑化は図られるが、植栽木の被圧は強くなり、食害も発生しやすくなる。
    • 先行地拵え(伐採前地拵え・準備地拵え):主伐に先立って、林内の雑草木を刈り払う。
    • 伐採前の作業(収穫調査など)が容易になる。
    • 刈り払い作業が楽である。
      • [理由]日陰での作業になる。
  • 伐採作業が容易になる。
    • [理由]移動(歩行)がしやすい。
    • [理由]伐採作業時に支障木を伐採しなくてよい。
  • 伐採作業の危険度が低くなる。
    • [理由]待避のじゃまになるものがなくなる。
  • 先行地拵えを行ってから植栽までの期間が長いと、刈り払った伐根から萌芽が発生したり植生が回復したりして、再度の刈り払いが必要になることがある。

4.4. 地拵えの方式(枝条や刈り取った雑草木の処理)

  • 枝条などの片付け方にいくつかの方式があるので、それぞれの長所・短所をよく理解して方式を決める。
    • 棚積み地拵え:末木・枝条・刈り払った雑草木を集めて、適当な間隔で棚のように積み上げる。
      • 通常、等高線沿いに棚をつくる(横筋棚積み地拵え)。
      • [理由]地拵え後の林地での移動が水平方向になるので、移動が楽。
        • このとき、林地を上下に移動できるよう(上ったり下りたりできるよう)、適当な間隔で棚に隙間をつくる。
        • 枝条などの量が多いときは、巻立てで移動させてもよい。
      • 積み上げた棚が下方に移動しないように、伐根のあるところに積み上げるか、杭を打つ。
      • 棚をつくる位置の樹木を伐採せずに、そこに集積するのもよい。その樹木の樹冠が植栽木の成長に影響する場合は、1~2mの高さで幹を伐るとよい。
        • その樹木が広葉樹の場合、残された幹から後生枝が発生し、やがて植栽木を被陰するようになることがある。
    • 枝条散布地拵え: 末木・枝条・刈り払った雑草木を林地全体にまき散らす。
      • 大きな枝などは、散布しやすいように細断する。
      • 枝条などの量が少ないときに採用される。
      • 地表面の保護に適する。
        • [理由]土壌水分の蒸発が防げる。
        • [理由]雨水による表面侵食が緩和される。
        • [理由]林地全面に腐植質が補給される。
      • 植栽作業の工程は増える。
      • 散布された枝条などが大きいと、下刈り作業の工程が落ち、危険度も増す。
        • [理由]刈り払い機の刃が枝条に当たらないように気を使う。
        • [理由]刈り払い機の刃が枝条に当たると、キックバックを起こしたり、枝条を跳ね飛ばしたりする。とくに、ヒノキの乾燥した枝条は硬いので注意を要する。
    • 巻き落とし:末木・枝条・刈り払った雑草木をまとめて、谷筋に落として集積する。
      • 巻立てで落とすと作業が容易。
      • 植栽可能な面積が増え、植栽作業や後作業である下刈り作業がしやすい。
        • [理由]地拵え後の林地に枝条などが残らない。
      • 谷筋から斜面下部に枝条などを集積すると、斜面で最も生産力の高い場所を有効に使えない。
      • 常水がある渓流に枝条などを集積すると、水圏の生態系を乱すことがある。
    • 火入れ地拵え:末木・枝条・刈り払った雑草木を集めて、燃やす。
      • 植栽作業が楽になる。
      • 後作業である下刈り作業が楽になる。
      • 植栽木に対するノネズミの被害が軽減できる。
      • 林野火災の発生や表面侵食や地力低下の恐れがあるので、避けた方が無難。
      • 現在では、ほとんど行われない。
  • 植栽する苗木が小さい(苗高が低い)場合は、ていねいな地拵えをする。
    • [理由]苗木が小さければ、より細かい枝条でも、残っていれば苗木を被陰する。
  • コンテナ苗を専用器具で植栽する場合は、通常より粗い地拵えでもよい。
    • [理由]土の埋め戻しが必要ないので、植栽時の夾雑物の除去をそれほど神経質に行わなくてもよい。
  • 落葉や細かい枝まで片付けるような潔癖な地拵え(必要以上にていねいな地拵え)はしない。
    • [理由]地表面が裸出すると、表土流亡が発生しやすくなるなど、林地の保護に不利になる。

4.5. 集材方法と地拵えの容易さ

  • 集材方法により集材後の林地残材の量が変わるので、集材方法は地拵えの作業工程に大きな影響を及ぼす。
    • 全木集材は、地拵えが楽になる。
      • [理由]末木・枝条が林地に残らない。
      • 全木集材では、造材作業場所付近に大量の末木・枝条が集積される。
    • 短幹集材が、いちばん地拵えが大変になる。
      • [理由]全幹集材より、末木部分が多く林地に残る。
  • 集材方法は林地の作業条件や使用する機械などによって決められるので、それに応じた地拵えの方法・工程を計画する必要がある。

4.6. 棚積み地拵え作業の進め方

  • 棚をつくる場所を決め、枝条などを横向き(等高線方向)にして積んでいく。
  • 植栽が可能な面積を広くすることが大切。
    • 棚をできるだけコンパクトにするとよい。
    • 棚と棚との上下間隔は、大きい方がよい。
  • 集積した枝条などが後から移動しないよう、安定させる。
    • 伐根にかけるように積み始める。
    • 伐根がない場所では、枝条や刈り取った幹でつくった杭を打ち、そこに集積する。
  • 大きな枝条は短くしたり、二又のものは一本にしたりする。
    • [理由]移動や集積がしやすい。
    • ある程度の長さがあった方が積んだ後に安定するので、必要以上に短くしない。
    • 切る手間が増すので、必要以上に短くしない。
  • 浮き石があったら、拾って、棚(枝条などの集積)の斜面上側に、接地させて置く。

4.7. 地拵え作業のコツ・注意点

  • 湾曲している枝条や幹は、湾曲の内側を下側にして積む。
    • [理由]押さえやすく、コンパクトに集積できる(=暴れない)。
    • [理由]安定する(=動きにくい)。
  • 枝条などの片付けは、できるだけ生木に近い状態のとき(乾燥する前)に行う。
    • [理由]乾燥すると硬くなり、ナタやノコでの切断がしにくくなる。
    • [理由]水分が多い方が柔軟で、コンパクトに集積できる。

4.8. 機械(重機)を使用する地拵え

  • 重機が侵入できる林地では、以下のように地拵えに重機を利用できる。
    • ブッシュカッターによる刈り払い。
    • グラップル(とくにロングリーチグラップル)による枝条などの移動・集積。
    • 集材作業の後に連続して行うとよい。→ 一貫作業
    • バックホーやブルドーザーによる、ササ類の地下茎の剥ぎ取りや耕耘。
  • 重機を使用することで、作業の省力化が図れる。
    • [理由]作業にかかる人工数が減少する。
    • [理由]作業者が、肉体労働から解放される。
  • 重機を使用することで、作業の安全性が高まる。

4.9. 地拵え作業における安全管理

  • 以下の点に注意して作業すること。
    • 林地を移動する際の転倒・転落
    • 斜面での落石
    • 雑草木の刈り払いでの刈り払い機やチェーンソーによる事故
    • 枝条などの切断におけるチェーンソーによる事故
    • 集積した細かい枝条をまとめて切断するようなとき、キックバックが発生しやすい。
    • 雑草木の刈り払いや枝条などの切断の際のナタ・ノコによる怪我
    • 枝条などを移動させるときの他人に対する事故
    • 熱中症