コンテンツへスキップ ナビゲーションに移動- 下刈りの目的
- 下刈りの時期・期間
- 下刈りの方式(全刈り・筋刈り・坪刈り)
- 下刈り作業の道具と服装
- 下刈り作業の季節
- 下刈り作業の手順
- 下刈りと前作業・後作業との関係
- 下刈りの省力化
- 下刈り作業における安全管理
6.1. 下刈りの目的
- 植栽木を速やかに、かつ健全に成長させる。
- [理由]植栽木が周囲の雑草木に被圧されると、十分な光合成を行えない。
- 植栽木の幹曲がりを抑制する。
- [理由]植栽木に他の植物が寄りかかったり、覆い被さったりして、主軸がまっすぐ伸びなかったり、幹が傾いたりすると、幹曲がりが生じる。
6.2. 下刈りの時期・期間
- 下刈り期間(開始時期から終了時期までの年数)は、通常、5~7年と言われている。
- この期間は絶対的なものではないので、現地の状況を見て判断する。
- 下刈りの開始時期は、ふつう植栽当年か植栽翌年である。
- 再造林の場合は、拡大造林と比較すると雑草木の生育が旺盛でないことが多いので、植栽当年の下刈りを省略できることが多い。
- 下刈りの終了時期は、下刈りを中止しても植栽木が雑草木からの被圧を受けないと判断できたときである。
- [理由]植栽木が雑草木からの被圧から解放されたのであれば、雑草木の被圧からの解放を目的とする下刈りは不要である。
- 競合植生の種や性質を知ることで、より的確な判断ができる。
- 競合植生が草本植物やササ類であれば、草丈が限定的なので、被圧からの解放を判断しやすい。植栽木の樹高が最大草丈を超えれば、被圧から解放されたと判断できる。
- 競合植生が木本植物の場合、その樹高成長速度が植栽木に勝ると、下刈りを終えた後、植栽木により林冠が閉鎖する前に競合植生に追いつかれることがある。それを見越して下刈り終了の判断をするという考えもあるが、除伐を早めに実施することで対処するという考えもある。
- 植栽木の梢端が被圧されていなければ、植栽木の樹高成長は衰えない(山川ら2016)。
- 植栽木の枝葉が被圧されていれば、植栽木の直径成長量は小さくなる。
6.3. 下刈りの方式(全刈り・筋刈り・坪刈り)
- 下刈りの方式には、刈り払い作業を行う範囲の違いにより、全刈り・筋刈り・坪刈りがある。筋刈り・坪刈りは、部分刈りとも呼ぶ。
- 部分刈りは、通常、省力化を目的に実施するが、必ずしも省力化が実現できるわけではない。
- [理由]翌年以降に刈り残された雑草木が大きくなっていると、その除去に手間がかかる。
- [理由]刈り残された部分につる植物が存在すると、その除去に手間がかかる。
- 部分刈りでは、ノネズミによる植栽木への食害が増える。
- 全刈りでは、シカやカモシカによる食害を受ける危険性が高くなる。
- 寒冷・寡雪な場所での全刈りは、寒風害を受ける危険性が高くなる。
6.4. 下刈り作業の道具と服装
- 通常は、刈り払い機を使用する。
- 刈り払い機には、必ず緊急離脱機構付きの肩掛バンド(両肩から吊すハーネスタイプ)を装着すること。
- かつては、刈り払い鎌を使用していた。今でも、ボランティアなどによる下刈りには刈り払い鎌を使用する。
- 服装は、以下のとおりとする。
6.5. 下刈り作業の季節
- 年間の下刈り回数は、1回もしくは2回とする。ふつうは1回でよいが、雑草木の生育が旺盛なときは2回にする。
- 年1回のときは、7月ころの作業が効果的である。
- [理由]刈り払いの対象が木本、多年生草本、ササ類の場合、この時期は当年の伸長成長のために前年の貯蔵養分を消費しきっている。このため、この時期には刈り払い後の再生力が低下している。
- 下刈りが遅れると、下刈りの効果が小さくなる。
- [理由]雑草木による被圧期間が長くなる。
- [理由]下刈り後の植栽木の生育期間が短くなる。
- 年2回のときは、1回目を6月上・中旬に、2回目を8月上・中旬に行うとよい。
- 年2回の下刈りをするのは、植栽木の樹高が低く、かつ雑草木の生育が旺盛なとき。
- 植栽木が小さいうちは、早めに下刈りを行うとよい。
- [理由]植栽木が小さいほど、雑草木に被圧されやすい。
- [理由]植栽木が小さいのに雑草木が大きいと、誤伐が生じやすい。
6.6. 下刈り作業の手順
- 刈り払いに使用する道具をしっかりと準備する。
- 刈り払い機を使用する場合は、機械を入念に整備し、燃料を準備しておく。
- 傾斜地では、斜面下方から上方に向かって作業を進める。
- 刈り払い機を使用するときは、等高線に沿って移動しながら作業を進める。
- 刈り払い鎌を使用するときは、等高線に沿って移動しながら、もしくはそのまま上方に移動しながら作業を進める。
- 植栽木を確認して、植栽木の周囲は注意深く刈り払う。
- 植栽木と植栽木の間は、大胆に刈り進めてよい。
- 刈り払われた雑草木が植栽木に覆い被さっていれば、それを外す。
- 植栽木の根元から絡まっているつる植物を刈り払えないので、刈り払いが終わった後につる切りの仕上げをする。
- 手鎌を使用して作業するとよい。
- 切っただけではつるが植栽木から離れないので、つるを外すこと。とくに梢端部に絡まったつるはていねいに外すこと。
6.7. 下刈りと前作業・後作業との関係
- 下刈りの前作業である地拵えや植栽がていねいにされていると、下刈り作業は楽になる。
- [理由]地拵えの刈り払いがていねいになされていると、雑草木の回復が遅くなる。
- [理由]地拵えで大枝が残っていると、刈り払い機の刃がそれに当たらないように作業しなければならないので、神経を使い、手間もかかる。
- [理由]植栽列が通っていると、とくに水平列が通っていて、さらに植栽間隔が一定であると、植栽木を楽に見つけることができる。
- 毎回の下刈りの仕上がりがよければ、翌年の下刈り作業が楽になる。
- 最後の下刈りで、つる植物を徹底的に除去すれば、後作業のつる切り作業が楽になる。
- 下刈り(とくに最後の下刈り)がきちんと実施されれば、後作業の除伐が楽になる。場合によっては、除伐が不要になる。
6.8. 下刈りの省力化
- これからの人工林施業において、下刈りはできるだけの省力化が必要である。
- [理由]下刈りには多大な労力と経費がかかり、それが森林経営を圧迫する。
- 下刈りの省力化を実現する方法として、次のようなことが考えられる。
- 下刈りの省力化は、長期的な視点で考える。
- [理由]1回1回の下刈り作業で省力化を実現することは難しいので、前後の作業を含めたトータルコストを削減するとよい。
- 下刈りの省力化は、現地の状況(とくに雑草木の種や密度)に応じて考える。
6.9. 下刈り作業における安全管理
- 以下の点に注意して作業すること。
- 刈り払い機・刈り払い鎌の使用位置
- どちらも足下の水平位置よりも低い位置に刃物がこないように。
- 刈り払い機の操作
- 基本的な持ち方、持ち運び方、操作方法を遵守する。
- キックバックに注意すること。株元や枯枝にはとくに注意する。
- 熱中症
- 暑い時期の、さらに日陰のない場所での作業になるので、とくに注意する。