- 苗畑や施設で育てた苗木を造林地に植え付ける作業。
5.1. 植栽の目的
- 目的樹種からなる森林を造成する。
- [理由]そこに存在しない、あるいは少ない樹種を確実に導入できる。
- 確実に、かつ速やかに森林を造成する。
- [理由]播種により目的樹種を導入できる可能性はあるが、播種だと初期(種子の発芽~実生の定着)の死亡率が高いために、目的樹種が育たない危険性がある。植栽に用いる苗木は、その時期を育苗により乗り越えている。
5.2. 植栽の計画
- 苗木の植栽による造林(植樹造林)を行う際は、植栽の実行前にきちんとした計画を立てることが必要である。
- 植栽計画は、収穫を計画するとき一緒に立てるべきである。
- [理由]持続的な森林経営を実現するため。
- [理由]収穫(森林の伐採)と更新は前作業・後作業の関係にあり、両者を一体として考えることで、より効率的な作業が行える。
- [理由]早めに計画を立てることで苗木の手配が確実になる。
- 植栽計画でとくに重要な項目は、植栽樹種・苗木サイズ・植栽密度・植栽時期である。
- [理由]これらが決まらないと、苗木の手配(どんな樹種の、どんな規格の苗木を、何本、いつまでに納入してもらうかを指定して発注)ができない。
- 品種が選択できる樹種であれば、生産目標に適合する品種を選択するとよい。
- [理由]林木育種事業において、育種目標(成長速度、病虫獣害への耐性、気象害への耐性、材質など)に沿った品種が選抜されている。
- 無花粉・少花粉の品種などの植栽が行政から指定されていることがある。
- エリートツリー(精英樹同士の交配により作出された特別に成長が優れた品種)が開発され、その普及が待たれている。
5.3. 植栽配置
- 苗木をどのような並びで植えていくか、その並びのことを植栽配置という。
- 裸地(皆伐跡地など)に植栽する場合の基本的な配置には、正方形植え・長方形植え・千鳥植え・正三角形植え・巣植え・並木植えがある。
- 正方形植え:正方形に切った格子の交点(正方形の頂点)に苗木を配置する植え方。最も一般的な植栽配置。
- 長方形植え:斜面の傾斜方向の辺が長い長方形の頂点に苗木を配置する植え方。
- 斜面では、山側の個体が競争に有意な位置にあるので、その被圧により、斜面に生育する林木は谷側の枝が発達し、山側の枝が枯れ上がりやすい。長方形上では上下の間隔が広めになるので、その被圧が弱くなり、山側の枝の枯れ上がりが抑制され、樹冠がより均等に発達しやすくなる。
- 千鳥植え:方形植えの上下の苗木が少し横にずれるよう配置する植え方。
- 苗木が上下に一直線に並ばないので、雪による倒木が発生するときなどに、斜面上側の個体が下側の個体に倒れかかることがない。
- 正三角形植え(三角植え):正三角形を並べた交点に苗木を配置する植え方。
- 幾何学的な植栽配置の中で最も樹冠と樹冠の隙間が小さくなる、すなわち単位面積あたり最大数の苗木を配置できる。
- 樹冠の均等な発達を促すことができる。これは、平坦地や緩斜面において顕著である。
- 千鳥植えと同様に、上下の列で苗木が縦に並ばないので、雪による倒木が発生しても倒れた個体が下の列の個体に倒れかかりにくい。
- 巣植え:3~5本の苗木を小集団(巣)として、小集団どうしの間隔を広めにとる植え方。
- 小集団内では密植の、小集団間では疎植の効果が得られる。そのため、小集団の内側の枝は枯れ上がりやすく、一面無節の材が得られる。小集団外側の枝は発達するので、それにより個体の健全性が担保される。
- 獣害防除のために、5本(方形に4本、その中心に1本を配置)の小集団をつくることがある。中心の1本は周囲の4本に保護されるという発想。
- 並木植え:並木のように苗木を並べて配置する植え方。
- 1列や2列で植える。
- 斜面では水平方向に並べると、歩行しやすく、下刈り作業の能率が上がる。
5.4. 植栽密度
- 植栽密度とは、単位面積あたりに植え付ける苗木の本数のことで、ふつうhaあたりの本数(本/ha)で表す。
- 植栽密度と植栽配置により、苗木と苗木の間隔(植栽間隔)が決まる。
- 植栽密度を高めに植えることを「密植」、低めに植えることを「疎植」という。
- 何本以上が密植で、何本以下が疎植だという定義はないが、2,500本/ha~3,500本/haが標準的な植栽密度とすれば、4,000本/ha以上を密植、2,000本/ha以下を疎植と考えればよいだろう。
- 植栽密度は、樹種や品種・系統の特性、立地条件(地位・地利・積雪深など)・経営目標(どんな材を生産するか)、コスト(植栽時のコストと初期保育にかかるコスト)などを総合的に勘案して決める。
- 初期成長が遅い樹種は植栽密度を高めに(植栽間隔を狭めに)、初期成長が速い樹種は植栽密度を低めに(植栽間隔を広めに)するとよい。
- [理由]初期成長が遅い樹種を低い密度で植えると、林冠閉鎖に時間がかかり、下刈りが必要な期間が長くなってしまう。
- [理由]初期成長が速い樹種を高い密度で植えると、林冠閉鎖までの時間が短くなるので、下刈り期間は短くて済むが、植栽木どうしの個体間競争がすぐに始まってしまう。
- 地位の低い土地では植栽密度を高めに、地位の高い土地では植栽密度を低めにするとよい。
- [理由]地位が低いと植栽木の成長が遅く、地位が高いと植栽木の成長が速い。
- 地位の低い土地での植栽については、樹種を変更するか、植栽を見送ることを考えた方がよい場合がある。ただし、植栽を見送るならそれに変わる確実な更新方法を検討しなければならず、ときには収穫のしかた(伐採方法)の変更も考えなくてはならなくなる。植栽計画を収穫計画と同時に立てるとよいのは、こうした配慮が必要になることも理由の一つ。
- 優良材生産を目標にする場合は、密植もしくは密植気味で植栽するのが望ましい。
- [理由]密植だと、多くの本数の中から、形質に優れた個体を選抜することができる。選抜の機会は間伐。
- [理由]密植だと、林木が強めの競争の下で生育するので、枝が発達しにくい(太くなりにくい)。
- 密植の場合、早め早めの間伐を実行しないと、過密が原因で不健全な森林になりやすいので注意を要する。
- 奈良県の吉野林業や三重県の尾鷲林業など、伝統的に密植造林を行ってきた地域がある。
- 小径材の販路がある場合、密植・超短伐期で多くの材を得ることができる。あるいは、密植しておいて、初期の間伐で小径材を収穫することも可能。
- 近年、造林コストを低減させるために、疎植が指向されることがある。
- [理由]疎植だと植栽本数が少なくなるので、苗木代・植栽の手間(人工数)を小さくできる。
- 林冠が閉鎖するまでの時間がかかるので、下刈りや除伐の経費がかさむことがある。これらを含めたトータルコストで考える必要がある。
- 枝が張る(枝が太くなる)、優良木の選抜機会が減るなど、材質に対する負の効果があり得る。生産目標と対比させながら、疎植の妥当性を検討する必要がある。
- 苗木サイズに対する植栽密度は、ふつう、大苗<中苗<小苗とする。
- [理由]大苗ほど、林冠閉鎖までの時間が短くなる。
- [理由]大苗ほど高価になり、植栽の手間もかかる。
- 疎植を行うために大苗を選択することもある。
5.5. 植栽時期
- 裸苗(普通苗ともいう)の植栽適期は、初春(春植えという)か初秋(秋植えという)。
- 植栽の最適期は、早春の、シュートが伸長し始める前。
- [理由]その年の主軸の伸長成長(幹の形成の第一歩)が、林地に定植された状態で迎えられる。
- [理由]苗木が直立状態に固定されれば、主軸は真上に伸びられる。苗木が不安定な状態に置かれていると、主軸に曲がりが生じやすい。
- [理由]シュートが伸長し始めた苗木は、取り扱いに注意を要する。
- [理由]伸長し始めのシュートは軟弱で、折れたり、傷ついたりしやすい。
- 植栽後にフェーン現象で特別に乾燥することがある地域(北陸地方など)では、注意が必要。秋植えも選択肢に。
- 多雪地や西南日本の暖地では、秋植えが行われることがある。
- [理由]多雪地では、春の植栽適期に残雪があって植栽作業ができない。雪解けを待つ間に、苗畑などにある苗木は、シュートの伸長が始まってしまう。
- [理由]暖地であれば、植栽後に根が成長する期間が長くなる。
- [理由]暖地であれば、凍上によって苗木が持ち上げられることがない。凍上が発生すると、苗木が持ち上げられたり、そのために倒伏したりして、その後に水分ストレス(乾燥による被害)を受ける。凍上:地中の水分が凍結し、土壌の表面が持ち上げられる現象。
- 秋植えの場合は、9月中旬から10月にかけての時期がよい。
- [理由]この時期だと、地上部の伸長成長が休止し、根の成長がまだ止まっていない。
- 無積雪の寒冷地で凍上の危険性があるところでは、秋植え(とくに遅くなってからの植栽)は避ける。春植えであれば、その年に根が地山にまで伸びるので、凍上が発生しても植栽木が持ち上げられることがない。
- 無積雪の寒冷地で風のきついところでは、根が十分に張っていないことで寒風害の被害を受けやすくなる。
- 寒風害:乾いた風が葉に当たることで強制蒸散が発生し、一方で根が十分に水を吸えない(水分の補給がない)ときに起こる乾燥害。
- 春先は農作業が集中するので、作業時期を分散させるために秋植えが行われることもある。
- 春植えの適期を逃したときは、伸びたシュートが固くなる梅雨時に植えるか、秋植えにするとよい。
- 鉢付き苗(ポット苗・コンテナ苗)は、通年の植栽が可能。
- [理由]根が培地に包まれているので、植栽作業に当たっての水分ストレスが発生しにくい。
- 積雪がある地域、土壌が凍結する地域では、冬期の植栽作業ができない。
- 凍上が発生する地域では、冬に近くなっての植栽は避ける。
5.6. 植栽作業の進め方
5.6.1. 基本:傾斜地に裸苗を植栽するときの手順
- 準備するもの:苗木・苗木運搬用の袋・鍬(唐鍬)・尺竿。
- 購入した裸苗(山出し苗)は、コモや苗木梱包シートに包まれているので、苗木を取り出す直前までほどかないようにする。
- 苗木運搬用の袋は、側面から苗木を取り出せるようになっている、専用の苗木袋(帆布製のリュックサック)が便利。
- 苗木袋がなければ、肥料袋などの丈夫なビニール製の袋でもよい。
- 根が乾燥するので、苗木を裸で持ち歩くことは厳禁。
- 鍬は、山林用の唐鍬が使いやすい。
- 石礫が多い現場では、十字鍬(片側がツルハシになっている唐鍬)が石を起こすのに使いやすい。
- 石礫が少ない現場では、ツルハシの付いていない唐鍬が軽くて使いやすい。
- 尺竿は植栽間隔の目安にするもので、専用のものを準備してもよいが、現地にあるものでつくることも可。
- 現地でつくるときは、できるだけ真っ直ぐで、細く(軽く)、丈夫な、木の幹を必要な長さ(植栽間隔分)に切る。
- 鍬の柄を尺竿の代用にすることも多い。その場合は、自分が使う鍬の柄の長さを知っておくこと。
- 苗木を準備する。
- 根が長いときは、根をハサミ(剪定ばさみなど)で適当な長さに切り詰める。
- [理由]根を広げて植え付けるので、根が長すぎると、根がぐしゃぐしゃになって、うまく広げられない。
- 根を短く切り詰めすぎないように注意すること。
- 作業中に、根を乾燥させないように注意する。風の当たらない、日陰で作業すること。苗木の出しっぱなしも厳禁。
- 土の付いた根を切ることでハサミの刃が痛むので、古いハサミを根切り専用にするとよい。
- 苗木を運搬用の袋に入れる。
- 主軸の成長点を傷つけないよう、苗木はていねいに扱うこと。
- 根が長いときは、根をハサミ(剪定ばさみなど)で適当な長さに切り詰める。
- 植栽位置を決める
- 植え始めの植栽位置から、順次、尺竿を使って次の植栽位置を決めていく。
- 上下の間隔が狭くならないように注意する。
- 上下の間隔をとるとき、尺竿を地面に沿ってあてず、水平に(谷側を空中に浮かせて)あてること。
- ふつうは、水平方向に移動しながら植え進める。
- [理由]上下の移動をできるだけ少なくした方が、移動が楽。
- [理由]水平列がきれいに揃っていると、後作業である下刈りがしやすい(苗木を発見しやすい)。
- 植えたい位置に障害物(切り株、根、岩など)があるときは、植栽位置をずらせばよい。
- できるだけ水平方向にずらすこと。
- 巻尺を張って植栽位置に目印の棒を挿していくこともできる。
- どうやっても、ピタッと揃った植え位置を決めることはできない。神経質になりすぎないこと。
- 地表の地被物を取り除く。
- [理由]その後の作業で、植え穴に地被物が混入しないようにする。
- 唐鍬を使って、植栽位置の周囲にある地被物(落葉・落枝・小石など)を外側に移動させ、地表面を露出させる。
- 植え付け位置を中心に、60~70cmの範囲を片付ける。
- 斜面上側の土を埋め戻しに使うので、その土量を考えて、斜面上側を広めに片付けるとよい。
- 植え穴を掘る。
- 植栽位置に、苗木の根を広げて植えることができる大きさの穴を掘る。
- 植え穴の一辺は、40cmくらい。円形に掘るのは難しいので、ふつうは四角形になる。
- 穴の深さは、斜面下側で見て、苗木が苗畑で育てられたときの地際までが十分に埋められる深さ。ふつうは、30cmくらい。
- 掘り上げた土は、斜面下側に積む(盛る)。
- 穴を掘り終えたら、積んだ土を唐鍬の背で押しつけておく。
- 穴の中に石や根があれば、取り除く。
- [理由]苗木の根と埋め戻した土との密着を妨げるものを除去する。
- 穴の底を唐鍬で軽くほぐしておくとよい。
- 植栽位置に、苗木の根を広げて植えることができる大きさの穴を掘る。
- 苗木を植え穴に置く。
- 穴の中央に、根を広げて苗木を仮置きする。
- 穴が深すぎたときは、斜面上側の地表に近い部分の土を崩して穴にいれ、高さを調節する。
- [理由]腐植に富んだ土を根の周囲(これから新しい根が張る最初の部分)に入れる。
- 植え穴に土を入れる。
- 苗木のポジションが決まったら、穴に土を入れていく。
- 入れる土は、植え穴の斜面上側の土を使う。
- 苗木の位置が安定するまでは、片手で苗木の根元を持って支え、もう一方の手で唐鍬を使って、斜面上側の地表に近い部分を削るように崩して、その土を穴に入れる。
- [理由]腐植に富んだ土を根の周囲(これから新しい根が張る最初の部分)に入れる。
- このときもう一度、根が丸まっていないか(しっかり広がっているか)注意する。
- 根の周囲にある程度の土が入ったら、指を使って土を押し込む。
- [理由]根と周囲の土とを密着させる。
- さらに、斜面上側を崩しながら、穴に土を入れていく。
- 埋め戻した土の表面が水平になるように。
- 苗木の地際までしっかりと埋まるまで埋め戻す。
- 土以外のもの(地被物など)を混入させないこと。
- [理由]根と土の間に異物があり両者の密着が妨げられると、根が水を吸収する妨げとなり、乾燥の被害が発生しやすくなる。
- 土を踏み固める。
- 苗木の上の方を持ち、軽く上に引き上げながら、根元の土を足で踏み固める。
- 苗木を左右に小さく揺すりながら、少しずつ引き上げるようにしながら踏む。
- しっかりと体重をかけて踏む。
- [理由]根と土がしっかりと密着することで、根が土に含まれる水分を吸うことができる。
- 降雨中の作業で、土がじゅぶじゅぶになっていない限り、強めに踏んでも大丈夫。
- 外側から内側に向かって踏んでいく。
- [理由]外側を踏めば、押された土が内側に集まるので、根元が凹まない。
- 埋め戻した土の表面が沈んで根が浅くなったら、土を追加して調節する。
- 埋め戻した土の表面が水平になるように整える。
- 苗木の上の方を持ち、少し強めに引き上げてみて、苗木が動かないか確認する。
- 苗木が動くようなら、もっと強く踏み固める。
- 苗木が抜けてしまうように大きく動いたら、植え直す。
- 植え穴に土を入れるところから土を踏み固めるところまで、常に根と土を密着させるというイメージを持ちながら作業すること。
- 苗木の根元に地被物を敷く。
- 植え穴を掘る前に除けた地被物など、手近にある地被物を埋め戻した土の上に敷く。
- [理由]地表の乾燥を防ぐことができる。
- 植え穴を掘る前に除けた地被物など、手近にある地被物を埋め戻した土の上に敷く。
5.6.2. 植え方のバリエーション
- 一鍬植え
- 小苗を用いるとき、作業効率を重視した植え方。
- 植栽位置の地被物を除ける。狭い範囲でよい。
- 唐鍬を振り下ろして地面に突き刺し、そのまま手前に引き、地面に隙間をつくる。
- その隙間に苗木の根を押し込み、唐鍬を引き抜き、植えた場所を足で踏みつけて完了。
- ていねい植え
- 大苗を用いるとき、植栽後の活着成績を高めたいとき、植栽後の苗木の成長を少しでも良くしたいときの方法。
- 植え穴を大きめに掘る。
- 苗木を据える前に、穴の底に、崩した表土をお椀型に盛る。その上に、苗木の根を広げるように苗木を据える。
- 斜め植え
- 積雪地の傾斜地で、主にスギを植栽するときに採用することがある。
- 苗木を地表面に対してだいたい直角になるように(すなわち斜面下側に傾けて)植える。
- [理由]雪圧に、無理に逆らわないようにする。
- 苗木に無理な雪圧がかかると、幹が折損する。
- 雪圧によって苗木が倒されると、根が浮き、根と土の間に隙間が生じ、乾燥被害を受けやすくなる。なら、最初から倒された状態で植えておこうということ。
- 掘り上げた土を斜面下側に盛った部分を枕にして、それに預けるように苗木を据えるとよい。
5.6.3. 平坦地に裸苗を植栽する手順
- 基本的な手順は、傾斜地に植栽する場合と変わらないが、以下の点が異なる。
- 植え穴を掘るとき、唐鍬よりもスコップの方が掘りやすい。
- 斜面上側の土を崩して埋め戻すことができないので、掘り上げた土を使って埋め戻す。
- 掘り上げた土は、埋め戻しやすいように積んでおく。このとき、除けた地被物と混ざり合わないように注意する。
- 地被物を広めに除去しておくとよい。
- 埋め戻し始めに入れる土は、できるだけ表土を使う。
- 穴の掘り始めの土と深いところの土を別の場所に積んでおくとよい。
5.6.4. ポット苗を植栽するときの手順
- 基本的な手順は、裸苗を植栽する場合と変わらないが、以下の点が異なる。
- ポット苗への灌水は、植栽日の2日前くらいから止める。
- [理由]ポット内の土が湿っていると、ポットから苗木を抜いたときに根鉢が崩れやすくなる。
- [理由]ポット内の土が湿っていると重くなる。
- 苗木の運搬に苗袋を使わない。
- ポットの大きさに合わせて、運び方を工夫すること。
- 植栽位置を最初に決め、予め苗木を配っておくと作業がはかどる。
- 植え穴の大きさは、ポットが入る大きさでよい。
- 植え穴の深さは、根鉢の上面と埋め戻した土の表面が同じ高さになるように。
- 根鉢と地山の間に隙間があれば、しっかり埋め戻して軽く踏み固めること。
- ポット苗への灌水は、植栽日の2日前くらいから止める。
5.6.5. コンテナ苗を植栽するときの手順
- 基本的な手順は、裸苗・ポット苗を植栽する場合と変わらないが、以下の点が異なる。
- コンテナ苗への灌水は、植栽日の2日前くらいから止める。
- [理由]培地が湿っていると、コンテナから苗木を抜いた状態で(持ち運ぶとき)培地が崩れやすくなる。
- 苗木を運搬するとき、通常、苗木をコンテナから抜いて持ち運ぶ。
- 肩掛け袋や腰袋、腰カゴなどを使って運搬する。
- 植え穴(孔)は、コンテナ苗の培地がスポッと入るようにあける(“掘る”ではない)。
- 専用の道具(ディブル、スペード、プランティングチューブなど)がある。これらを使うときは、培地の大きさに合った道具を準備する必要がある。
- 傾斜地では、唐鍬も使いやすい。石礫が多い場所では、唐鍬が優れている。
- 地被物の除去は、穴をあける部分だけでよい。
- [理由]コンテナ苗の植栽では、土を埋め戻さない。
- それぞれの道具の使い方に従って地面に穴をあけ、苗木を落とし込む。
- 唐鍬の場合は、一鍬植えの要領で植える。
- 植える深さは、地表面と培地の上面が同じ高さになるように。
- 苗木の周囲の地面を踏み固めておく。
- コンテナ苗への灌水は、植栽日の2日前くらいから止める。
5.7. 植栽作業での注意点
- とにもかくにも、苗木(とくに裸苗)はていねいに扱うこと。
- 裸苗の場合は、根が乾かないよう、特段の注意を払うこと。神経質なくらいでいい。
- 植栽作業は、曇天で、無風の日に行うのが最もよい。
- 晴天だと、根に日光が当たることで、根が乾きやすくなる。
- 風があると、根に風が当たることで、根が乾きやすくなる。
- 降雨直前も植栽作業に適している。
- 晴天が続いたときは、降雨を待って、降雨後に植栽を行うとよい。
- 降雨時の植栽作業では、土を埋め戻すときに水を含んだ土を練らないようにする。また、あまり強く踏み固めないようにする。
- [理由]土の構造が破壊され(孔隙がつぶされ)、根腐れを起こしたり、干害が発生したりしやすくなる。
- 根腐れは、根が酸欠を起こすことで発生する。
- 干害は、乾燥時に毛細管現象が発現されないことで、水分の供給が絶たれて発生する。
- 浅植えにすると、乾燥の被害を受けやすくなる。風衝地など、ふだんから風当たりが強い場所では、とくに注意すること。
- 深植えにすると、根腐れを起こしやすくなる。ヒノキやカラマツで、とくに注意すること。
- 土壌が乾燥しやすい場所や風の強い場所では、少し深めに植えるとよい。
- [理由]地表に近いところほど、乾燥しやすい。
- [理由]風によって苗木が揺られると、根も動き、根と土の間に隙間が生じやすい。
- 重たい土(粘土質の土)の場所や排水の悪い場所では、少し浅めに植えるとよい。
- [理由]こうした場所では、根腐れが発生しやすい。
5.8. 植栽作業における安全管理
- 以下の点に注意して作業すること。
- 林地を移動する際の転倒・転落
- 斜面での落石
- 邪魔な石をどかしたり、穴を掘ったりするとき、落石が発生しやすいので注意すること。
- 上下作業にならないように。
- 熱中症
- 危険生物(ハチ・マムシ:作業の季節による)