上大内沢のスギ天然生林(秋田県)

いわゆる秋田スギの林の一つ、上大内沢のスギ天然林です。

案内板にはこの林が天然生林であると書かれており、森林が伐採された後に天然更新で成立したスギ林であることがわかります。現在は上大内沢自然観察教育林となっていますが、旧名は上大内沢天然林収穫試験地。1924年に試験地となってから2回の間伐が行われているようです。

スギとともに、本数は少ないもののトチノキが上層木になっています。といっても、トチノキの樹高はスギにとうてい及ばず、林冠木と呼ぶには忍びない状態です。

落葉広葉樹が亜高木層を形成しており、この層にもトチノキが多くありました。

ブナの上層木もあります。

ここにもトチノキ上層木があります。

仁鮒水沢のスギ天然林と比べて、スギの本数密度が低く、また上層に達している広葉樹が目立ちます。これは、2回の間伐の影響があるかもしれません。また、仁鮒水沢のスギ林は狭い谷沿いに成立していますが、こちらは台地状の緩斜面に成立しています。こうした立地の違いの影響もあるかもしれません。

国立科学博物館に展示されている秋田スギの標本は、この株の幹です。

この秋田スギは、秋田県秋田市上大内沢(かみおおないさわ)国有林(米代東部森林管理署上小阿仁支署管内)にあったもので、伐採時の樹齢255年、直径は地上高1.2メートル位置で138センチ、高さ49メートルの天然のもので、これほどのものは当地でも限られているようである。

木のメモ帳」https://kinomemocho.com/zatu_akitasugi.html

この個体を含めたスギ天然木の成長過程が、以下の論文で報告されています。
澤田智志ら(2007)秋田スギ天然林を構成する個体の成長解析.日林誌89


この写真は、森林施業研究会の合宿で訪れたときのものです。そのときの記録と参加者の感想もご覧ください。