板取の株スギ(岐阜県)

岐阜県関市板取(旧板取村)に、株スギと呼ばれる株状に生育するスギの一群があります。

株スギは、「あがりこ」と呼ばれる樹形をしたスギです。広葉樹のあがりこは、伐採箇所から発生する萌芽によって形成されます。スギの場合は、それとは異なり、伐採前から存在する枝が立ち上がって形成されます。これと同じ原理でつくられたものに、京都北山の台スギがあります。板取の株スギは、北山の台スギの巨大なものと考えて差し支えありません。

この株スギは、もともとは天然のスギです。それを人がくり返し利用することでつくられた、人工的な樹形です。伐採利用されていた当時は、どのような景観を呈していたのでしょうか。

株スギの様々な表情をお楽しみください。

写真を見ればわかるとおり、現在、株スギの周りはスギの人工林です。株スギの群落の周りという意味ではなく、株スギの個体の周りにスギが植えられているということです。株スギの伐採利用が停止して、ずいぶんな時間が経過しました。周囲のスギが育ち、株スギを形成する幹と競合しています。

株スギ、あるいは「あがりこ」に興味を持たれた方には、以下の本をおすすめします。この株スギも紹介されています(管理人も一緒に調査しました)。
鈴木和次郎『あがりこの生態誌』日本林業調査会(2019)