夏緑広葉樹林の伐採後の天然更新01
場所:岐阜県飛騨市古川町
標高:950m
多数の前生稚樹が確認できたので、それらによる更新が期待できるとして小面積皆伐を実施した場所。結果的に、伐採されたのは前生稚樹を確認したところではなく、それに隣接する場所となった。
伐採前の林分(皆伐地に隣接する林分)
ミズナラを優占種とする夏緑広葉樹林
コナラ・クリ・ホオノキ・ヒメコマツ・アカマツなどが混交する。
岐阜県飛騨地域の二次林の、典型的なタイプの一つ。
(2019年11月21日)
ナラ枯れが進行中
そのため林冠にギャップがある
(2020年7月30日)
林床にはチシマザサが生育
チシマザサの密度には濃淡がある。
チシマザサが少ない/存在しない林床には、稚樹が多く生育していた。
(2020年7月30日)
前生稚樹
この写真には、ミズナラ、クリ、ウリハダカエデなどの前生稚樹が見られる。
ナラ枯れによる林冠ギャップがあることで、稚樹が生存できるだけの明るさがあると考えられる。
ただしそのサイズ(樹高)はごく小さく、上長成長するには明るさが足りないといえる。
2020年7月30日
伐採後1年目
小面積皆伐地の外観
遠目でも、伐根から萌芽再生していることがわかる。
事前に前生稚樹を確認したのは、伐採地の中段にあるタナより少し上の、向かって左側の林分。
2021年9月9日
皆伐跡地の再生群落
緑の部分が多いが、一部に裸地(地肌が見える部分)もある。
塊になっているのが伐根からの萌芽。
2021年9月9日
ナラ枯れ被害木(ミズナラ)の伐根
もちろん、萌芽は出ていない。
ナラ枯れ被害木も製材用材として利用できた。
2021年9月9日
ミズナラの前生稚樹
光環境がよくなり、上長成長を始めた。この個体には、2回のシュート伸長が見られる。
2021年9月9日
ミズナラ前生稚樹のうどんこ病
元気に生育するが、うどんこ病にかかってしまった。
2021年9月9日
コナラ前生稚樹からの実生萌芽
コナラやミズナラの前生稚樹には、かつての地上部が伸長するのではなく、根元からの萌芽(実生萌芽)が伸長するものが多かった。
根系に資源を蓄えるコナラ属ならではの性質が、遺憾なく発揮されている。
上の写真と同じ個体
2回のシュート伸長をしている。
2021年9月9日
ミズナラの伐根からの萌芽
ミズナラで伐根から萌芽が発生している個体は、ごく少ない。
2021年9月9日
ウワミズザクラの伐根からの萌芽
この伐採跡地の群落で最も樹高が高いのが、ウワミズザクラの萌芽であった。
2021年9月9日
リョウブとミヤマガマズミの伐根からの萌芽
手前(中央やや右)にミズナラの前生稚樹が見える。これらの萌芽幹による被圧が心配される。
2021年9月9日
ホオノキの後生稚樹
ホオノキの後生稚樹は多かった。
いずれも、埋土種子由来だと考えられる。
2021年9月9日
オオヤマザクラの後生稚樹
2021年9月9日
クマイチゴ
この時点ではサイズが小さいが、サイズが大きくなると大変。周りの稚樹を被圧するし、痛くて近づけないしで。
2021年9月9日
伐採後2年目
2年目の再生群落
1年目に比べると、群落高がだいぶ高くなった。
とくに萌芽幹の樹高が高くなっている。
2022年9月15日
クリの萌芽幹
ウワミズザクラとともに、クリの萌芽幹は成長がいい。
周りのリョウブの萌芽に負けていない。
しばらく敵なしだろうから、このクリはあばれ木になるかもしれない。
2022年9月15日
ハクウンボクの萌芽幹
何だこの巨大な葉は!
2022年9月15日
ミズナラ伐根からの萌芽
太めの伐根からの萌芽。萌芽が出たといって、それが育つとは限らない。大径の伐根に見られること。
1年目に勢いが感じられない萌芽は、このように衰退してしまう気がする。
2022年9月15日
ホオノキ後生稚樹とミズナラ前生稚樹
2年目になると、ホオノキの後生稚樹がミズナラの前生稚樹より樹高が高くなっていた(この写真では)。
ギャップに適応したホオノキの成長特性がうかがえる。
2022年9月15日
キハダの後生稚樹
2年生の稚樹か。ホオノキに比べると、成長がいいとはいえない。
埋土種子由来だと考えられる。
2020年9月15日