夏緑広葉樹林の伐採後の天然更新02
場所:岐阜県飛騨市宮川町
標高:1,070m
ブナが優占する夏緑広葉樹林で、ブナをはじめとする前生稚樹が確認できたので、それらによる天然更新が期待できるとして、その林分を帯状択伐(帯状の小面積皆伐ともいえる)で伐採した。
伐採後(1年後)は、高木性樹種の前生稚樹と後生稚樹が確認できた。パイオニア種の発生は少なかった。チシマザサの新しい稈の発生は少なかったものの、今後の動態が気にかかるところである。
伐採前の林分
伐採地の検討
タワーヤーダで集材するので、この場所(尾根)は伐採地そのものではない。
見通しのいい落葉期に、先柱をどこにとって、どう架線を張るのがいいかや、伐採幅をどうするかを検討した。
2021年4月16日
ブナが優占する林分
岐阜県飛騨地域の中でも積雪の多い北部に典型な、ブナが優占する夏緑広葉樹二次林。
ミズナラ、ハリギリ、ウダイカンバ、イタヤカエデ、トチノキなどが混交。
林齢は、およそ70年。
2021年10月13日
ブナの前生稚樹
年数は経っていそうだが、サイズは小さいものが多かった。
ただ、わずかだが樹高2mほどのブナもあった。そこは、さすがブナといったところか。
2021年10月13日
ミズナラなどの前生稚樹
この写真ではミズナラ、コシアブラ、ウリハダカエデの前生稚樹が確認できる。
2021年10月13日
伐採直後の林分
作業終了間近の現場
向かって右側の列に、タワーヤーダの架線が見える。
伐採後の更新状況(1年目)を見たのは、向かって左側の列。
2021年12月14日
収穫された材
大径とはいえないが、通直な材が十分に収穫できた。少々の難あり、あえて難ありの材も、できるだけチップには出さずに利用した。
2021年12月14日
伐採直後の現地
密度は高くないが、チシマザサが残っている。伐採前に、林床の刈り払いが行われていない。
2021年12月14日
伐採直後の春
伐採されていない林分は芽吹きが始まっている。
2022年5月10日
伐採後1年目
伐採されなかった林分の断面
このような広葉樹林を伐採したということがわかる。
樹種によっては、林縁木に後生枝が発達するかもしれない。
2022年8月3日
伐採後1年目の再生群落
伐り株がそのまま見え、萌芽していないか、していても萌芽枝が少ないか、成長が旺盛とはいえないことがわかる。
小径木・中径木の伐根からの萌芽も少なそうである。
2022年8月2日
ブナの伐根
萌芽していない。
ブナの伐根からは、ほとんど萌芽していなかった。
2022年8月2日
ミズナラの伐根
わずかに萌芽しているが、この萌芽が成長する可能性は低いであろう。
ミズナラも、萌芽していない伐根が多かった。
2022年8月2日
ミズナラの伐根からの萌芽
小径のミズナラの伐根からは、萌芽がたくさん出ていた。
2022年8月3日
ホオノキの伐根からの萌芽
ホオノキやイタヤカエデは、多くの伐根で萌芽が確認できた。
2022年8月2日
シラカバの伐根からの萌芽
シラカバは萌芽しないと頭にあったが、そんなことはなかった。
2022年8月3日
ブナの前生稚樹
元気に生育しているが、上長成長はしていない。
サイズが小さいブナの前生稚樹は、光環境がよくなっても、すぐに上長成長を始められないのか。もしくは、ブナ前生稚樹にとっては強光すぎたのか。
2022年8月2日
ミズナラの前生稚樹
ブナに比べると、しっかり上長成長している。
2022年8月3日
ハリギリの前生稚樹
ハリギリの前生稚樹は、他の林分でもよく見られる。
右側に写っているのは、キハダの後生稚樹。
2022年8月3日
ブナの後生稚樹
ブナの結実後に伐採作業が行われたので、種子散布がなされた。
左の個体は、2回目のシュート伸長したことがはっきりわかる。
2022年8月2日
ミズメの後生稚樹
ミズメやウダイカンバは、期待したほど生えてこなかった。
2022年8月3日
ホオノキの後生稚樹
埋土種子由来だと考えられる。
2022年8月2日
オオヤマザクラの後生稚樹
埋土種子由来だと考えられる。
2022年8月2日
キハダの後生稚樹
埋土種子由来だと考えられる。
2022年8月2日
ミズキの後生稚樹
埋土種子由来だと考えられる。
2022年8月2日
タラノキの実生
埋土種子由来だと考えられる。
パイオニア種は少ないという印象。
2022年8月3日
クマイチゴの実生
さほど多くはないのが幸いだが、とにかく繁茂してほしくない。
2022年8月3日
ヤマブドウの実生
斜面下部に多く発芽していた。
将来、秋の楽しみになるが、森林の更新にとっては繁茂してほしくない。
2022年7月13日
オオカメノキやタムシバ
伐り残しや伐根からの萌芽があるが、さほど旺盛な成長は示していなかった。
これらも森林の構成要素として重要だが、更新のステージではおとなしくしていてほしい。
2022年7月13日
チシマザサ
チシマザサの密度はそれほど高くなく(この写真はやや密度が高い場所)、新しい稈の発生も旺盛でない。
この隙に更新が進むといいのだが。
2022年8月3日