森づくり・森林・樹木に関する日本語の専門用語の意味などを簡単に解説します。用語は、順に追加していきます。

  • 見出し語(太字)の次の段落はその用語の意味、さらに次の段落からは解説(緑の字)です。
  • 見出し語は、私見で、一般に用いられている語としました。同じ意味で似た用語が存在するときは、解説(緑の字)の中で触れています。

  • 意味は、主に末尾のリストにある辞書・用語集で確認し、必要に応じて他の書籍でも確認した上で記述しました。
  • 同じ意味(概念)で用いられている英語の用語があるとき(その英語に置き換えても誤解が生じないとき)は、見出し語に続いてそれを載せています。完全な1:1の対応ではない場合もあります。
  • 辞書・用語集・書籍によって与えられる意味が異なる用語があります(困ったもんです)。その場合は、サイト運営者が最も適切だと考える意味を載せています。その選択には私見が含まれますので、ご注意ください。
  • リンクが設定してある用語は、別のページに、もう少し詳しい解説があります。こちらも、順に追加していきます。

ア行

育成林(いくせいりん)
森林を育てるための人為が加えられた森林。
造林作業や育林作業が施された森林。
対象となる森林は、人工林か天然林(広義)かを問わない。もちろん、針葉樹林、広葉樹林、針広混交林といった森林タイプも問わない。
人工林は、その成立由来から全てが育成林である。天然林は、更新補助作業や除伐・間伐などの育林作業が行われた林分が育成林となる。

育成林業(いくせいりんぎょう)
育成林を対象とした林業。
人工林施業は、その典型である。

育林(いくりん) silviculture
森林を育てること。
個別技術として、下刈り、つる切り、除伐、枝打ち、間伐、雪起こしなどがある。
広義の造林は、育林の概念を含む。

一斉林(いっせいりん)
同齢単純林のこと。
 → 同齢林
 → 単純林

異齢林(いれいりん) uneven-aged forest; uneven-aged stand
樹齢が異なる樹木で構成されている森林。

衛生伐(えいせいばつ) sanitation cutting
林木の健全性を向上させることを目的に、昆虫や病気の蔓延を食い止めたり、減少させたりするために樹木を除去する作業。

枝打ち(えだうち) pruning
無節材を生産するなどの目的で、枝を切り落とす作業。
生きている枝を切り落とすことを生枝打ち(いきえだうち)、枯死した枝を切り落とすことを枯枝打ち(かれえだうち)という。

カ行

皆伐(かいばつ) clearcutting; clear cutting
あるまとまった広がりで、立木をすべて伐採する収穫の方法。
皆伐と群状択伐・帯状択伐とを分かつ面積に明確な定義はないが、1辺が伐倒木の樹高の2倍程度以上の群状、あるいは幅が伐倒木の樹高の1~1.5倍程度以上の帯状の伐採を皆伐とすることが提案(藤森2003)されている。

拡大造林(かくだいぞうりん)
天然林(広義)を伐採した跡地に人工林をつくること。

画伐(かくばつ)
漸伐の一種。

下種伐(かしゅばつ)
漸伐作業における、林床に稚樹を発生・定着させるための伐採。

間伐(かんばつ) thinning
発達過程にある林分で、主林木を間引く作業。

胸高直径(きょうこうちょっけい) diameter at breast height 略 DBH
成人の胸の高さで測定された、樹木の幹の直径。
日本の林業界では、地上高1.2m(北海道では1.3m)で測定する。欧米では地上高1.3mで測定することになっており、日本でも生態学者などを主に地上高1.3mで胸高直径を測定する場合もある。したがって、論文などで胸高直径を用いるときは、測定高を記載する必要がある。
斜面に生えている樹木の地上高は、斜面上側の地際を基準とする。
ふつう、輪尺または直径巻尺を用いて測定する。

極相林(きょくそうりん) climax forest
植生遷移の最終段階に到達した成熟した森林。

形状比(けいじょうひ)
樹高を胸高直径で除した値のことで、樹木の幹の形状を示す指標となる。
計算の際は、単位をmかcmに揃えること。例えば、胸高直径25cm、樹高20mの樹木の形状比は、80(2000cm/25cm もしくは 20m/0.25m)である。パーセントの単位をつけるのは誤り。
風害や冠雪害に対する耐性の目安や、過密林かどうかの判断基準などに用いられる。

原生林(げんせいりん) primary forest; virgin forest
人為の影響が全くないか、あっても軽微な森林。

更新(こうしん) regeneration
森林の世代交代のこと。
森林の林冠層に撹乱が生じて、はじめて更新が始まる。したがって、林内に前生稚樹が存在する状態は、「更新している」とはいわない。

更新補助作業(こうしんほじょさぎょう)
天然更新において、更新を確実にするために行う作業。
刈り払い、地表かき起こし(地掻き)、稚樹の刈り出しなど。

後生稚樹(こうせいちじゅ)=後生樹(こうせいじゅ)
林冠が撹乱を受けた後に発生した稚樹。

後伐(こうばつ)
漸伐作業における、下種伐の後に行う伐採。
受光伐と終伐(殿伐)が、これに相当する。

サ行

再造林(さいぞうりん)
人工林の伐採後に、再び人工林をつくること。

傘伐(さんばつ)
漸伐の一種。
一つの更新面で、予備伐・下種伐・後伐(受光伐・終伐(殿伐))というように何回かに分けての伐採を行い、収穫と更新を完了させる。このうち、下種伐と終伐(殿伐)は必須。

下刈り(したがり cleaning; weeding
植栽木が順調に成長するよう、それと競合する植物を刈り払う作業。
天然更新補助作業として行う下刈りと類似の作業は、刈出しと呼ばれる。

終伐(しゅうばつ)= 殿伐(しんがりばつ) final cutting; final felling
漸伐作業における、最後の伐採。
したがって、終伐によって漸伐作業(収穫作業と更新作業)が完了する。

樹冠(じゅかん) crown
個々の樹木の、枝葉の集まり。

樹高(じゅこう) tree height 略 H
樹木の背の高さ。
樹木の根元の地際(斜面では斜面上側の地際)から、樹冠の最も高い場所までの地上高で表される。
幹が傾いているなどして根元位置の真上に樹冠最高点がない場合、根元からの鉛直軸に樹冠最高点を投影した高さを自然高、根元と樹冠最高点までの直線距離を樹幹長という。
ふつう、測高桿(測高ポール)や専用の樹高測定機器を用いて測定する。

受光伐(じゅこうばつ)
漸伐作業において、下種伐と終伐の間に行うことがある、林床に定着した稚樹の健全性の確保、あるいは樹高成長を促す目的で、林内の光環境を改良するために行う伐採。
後伐の一種。
稚樹が順調に生育している場合には、必ずしも行う必要はない。
二段林作業における同様の目的の伐採も受光伐という。

主伐(しゅばつ) final cutting; final felling
同齢林において、最後にまとめて行う収穫のための伐採。
漸伐作業は、主伐を何回かに分けて行うものと位置づけられている。
従来、択伐作業には主伐の概念がないとされてきたが、近年、林野庁が更新を伴う伐採を「間伐」と対比させて「主伐」とするとしたため、本来の主伐の意味が失われて使われることが多くなった。

主林木(しゅりんぼく)
その林分を構成する主要な林木。
ふつうは、林冠構成木が主林木となる。
収穫の対象となる林木を指すことも多い。

初期保育(しょきほいく)
主に植栽による人工林施業において、成林に至るまでに行う保育作業の総称。
主な作業は、下刈り、除伐、つる切り、雪起こし。

除伐(じょばつ)
目的樹種の生育環境をよくするために、その生育を阻害する樹木を除去する作業。
植栽による人工林施業では、下刈りと間伐の間に行われる、植栽木とそれ以外の樹木の種間競争を緩和するための作業。この場合の主目的は種間競争の緩和であるが、植栽木であっても形質が悪かったり、病虫害におかされたりした個体も同時に除去することがふつうである。

人工林(じんこうりん) man-made forest
植栽、播種、直ざしによって更新させた森林。

人工林率(じんこうりんりつ)
森林面積に対する人工林面積の割合。
日本の人工林率は、約40%である。

薪炭林(しんたんりん)
薪や炭を生産するために維持・管理される広葉樹林。
小径で利用できることから、短伐期で収穫と更新が繰り返されてきた。更新は、萌芽更新を主とする。

精英樹選抜育種(せいえいじゅ せんばつ いくしゅ)
林木育種の手法の一つ。

整理伐(せいりばつ) salvage cutting
森林の経済的価値を高める目的で、枯死した樹木や、競争以外の要因で損傷したり衰退したりした樹木を除去すること。

前生稚樹(ぜんせいちじゅ)= 前生樹(ぜんせいじゅ)
閉鎖林冠下の林床に発生し、定着している目的樹種の稚樹。

漸伐(ぜんばつ)
主伐を何回かに分けて行い、収穫と更新を完了させる伐採方法。
伐区の形状と伐採の進め方の違いで、傘伐・画伐(群状画伐・帯状画伐)といった手法がある。

タ行

択伐(たくばつ) selection cutting
収穫に適した林木を選択して伐採する収穫の方法。
収穫木の選択が個体単位のときは単木択伐、パッチ状の集団のときは群状択伐、幅のある列のときは帯状択伐という。

択伐林(たくばつりん)
択伐と、それによって生じた林冠ギャップ内での更新が連続的あるいは断続的に行われることで維持される森林。
単木択伐により維持される森林を指すことが多い。

択伐林型(たくばつりんけい)
択伐林として維持されている森林の姿。
択伐林は、いつ見ても同じような林分構造を呈することで収穫の保続を実現している。その林分構造は、逆J字型の胸高直径階分布となる。

択伐林施業(たくばつりん せぎょう)
択伐林型を維持するように実施する施業。

単純林(たんじゅんりん)
主林木が単一樹種からなる森林。

地位(ちい) site quality
林地の生産力を示す概念。

地位級(ちいきゅう) site class
地位を等級区分で表現したもの。
3~7等級に区分されることが多い。ふつう、地位級別樹高成長曲線を使って読み取る。

地位指数(ちいしすう) site index
特定の林齢のときの樹高(上層木の平均樹高)によって地位を表現したもの。
40年生時の樹高が使われることが多い。

つる切り(つるきり)
林木に巻き付いた、あるいは絡まったつるを切断し、林木から外す作業。

天然更新(てんねんこうしん) natural regeneration
天然下種、萌芽、伏条などによる森林の更新。

天然生林(てんねんせいりん)
伐採された後に、人為によらずに再生した森林。
二次林の一つのタイプ。

天然林(てんねんりん)
日本の林業界の森林区分で、人工林以外の森林。
この定義において、天然林は人工林の対語であり、天然林には原生林、二次林、天然生林(二次林の一タイプ)が含まれる。

同齢林(どうれいりん) even-aged forest; even-aged stand
主林木の樹齢が、ほぼ同じである森林。
人工林のほぼ全てが、また、天然生林の多くは同齢林である。

ナ行

二次林(にじりん) secondary forest
既往の森林が破壊された後に、人為によらずに再生した森林。
森林が破壊された原因(人為か自然災害か)は、問わない。

二段林(にだんりん)
狭義の「複層林」において、上層(林冠層)と下層(低木層)の2層からなる林分。

抜き伐り(ぬきぎり)
= 択伐

ハ行

複層林(ふくそうりん)
樹冠層が2層以上ある森林。
最も混乱している林業用語の一つ。
林業技術としての複層林(狭義の複層林)は、目的樹種の樹冠層が2層以上にわたって存在する森林を指し、これは非皆伐施業として実施される。目的樹種の樹冠層が2層のものを二段林、3層以上のものを多段林、不連続のものを連続層林と呼ぶ。多く造成されたのは樹下植栽による二段林で、その林型は更新期間における一時的な姿である。
一方で、目的樹種であるかどうかは問わず、階層構造ができている森林も複層林である。
従来は、複層林と言えば狭義の複層林を指すことが多かったが、近年になって「育成複層林」なる用語を林野庁が使い始め、混乱に拍車がかかっている。

萌芽(ぼうが、ほうが)
(1)草木の芽が開葉すること。
この場合は、「ほうが」と読むことが多い。
(2)樹木の伐根や根元からシュートが発生すること、またはそのシュートのこと。
この場合は、「ぼうが」と読むことが多い。
そのシュートは、萌芽枝ひこばえと呼ばれることもある。
そのシュートの多くは、休眠芽に由来する。

萌芽林(ぼうがりん) coppice forest
萌芽更新によって成立した森林。

萌芽更新(ぼうがこうしん)
伐り株からの萌芽により森林が更新すること。

マ行

ヤ行

ラ行

立木(りゅうぼく)
林地に生育する樹木。

林冠(りんかん)
高木層の樹冠の連なり。

林冠木(りんかんぼく)
林冠を構成する樹木。

林分(りんぶん) stand
林相が一様で、周辺の森林と区別できる、まとまりのある森林。

林木(りんぼく) forest tree
森林を構成する樹木(ふつうは高木)。

ワ行

参考文献

  1. 森林学の百科事典.日本森林学会編.丸善.2021.
  2. 森林の百科事典.太田猛彦・北村昌美・熊崎実・鈴木和夫・須藤彰司・只木良也・藤森隆郎 編.丸善.1996.
  3. 森林・林業百科事典. 日本林業技術協会編. 丸善. 2001.
  4. 森林・林業・木材辞典. 森林・林業・木材辞典編集員会編. 日本林業調査会. 1993.
  5. 林業百科事典. 日本林業技術協会編. 丸善. 1971.
  6. 生態学事典.沼田真編.築地書館.1974.

引用文献

藤森隆郎(2003)新たな森林管理-持続可能な社会に向けて-.全国林業改良普及協会.